英語の翻訳の経験を通して学んだこと(4)-複数人で翻訳作業を行う場合

私が翻訳作業を行った書籍は、やや分厚く、分量も多かったので複数人で手分けして翻訳を行いました。そのときの作業の流れは以下のようでした。

1.担当するセクションを決める
2.各自が担当箇所を翻訳する
3.全員の翻訳が終了したら、クロスチェックを行う。
4.訳語の統一を行う。
5.再度確認
6.代表者が全体を読み直す
7.出版社による校正
8.校正の修正
9.完成


各ステップの詳細は以下のようになります。


1.担当決め

これは各自の得意分野であったり、経験や知識がある分野であるとそのセクションを担当するというルールでした。それ以外の箇所については、興味のある分野に立候補したり、逆にページ数が均等になるように配分したりという形で決定しました。


2.担当箇所の翻訳

翻訳した文章は、Wordに書き込むという形で仕上げていきました。使い慣れているということ、ならびにWordには変更履歴の記録を残す機能があり、これを使って4.のクロスチェックを行うためです。


3.クロスチェック

クロスチェックというのは、担当箇所の翻訳を他のメンバーが読んでチェックするというものです。
他のメンバーは別の箇所を担当しており、その箇所の翻訳と整合性がとれているかどうか、訳した内容が異なっていないかどうか、違和感がないかどうかなどをチェックします。
もし、おかしな訳であれば、前出のWordの変更履歴の記録機能を使って訳を修正します。修正された箇所は自動的に赤字などで目立つようになりますので、確認が容易になります。


4.訳語の統一

複数人で翻訳しているとどうしても起こるのが訳語の揺らぎです。
特に大事なキーワードなるような単語の訳し方が各人で違っていると、読者を混乱させてしまいますし、索引を作るときにも困ります。この訳語が異なってしまわないように、重要な言葉の訳を統一していきました。


5.再度確認

クロスチェックが終わったら、修正が加えられたWordファイルを読み直して、再度自分の担当箇所を確認します。このときに、統一された訳語を修正したり、修正された文章の確認を行います。


6.代表者が全体を読み直す

ここまでで、各担当者間での確認が完了します。しかし、全体的な統一感は1人の人間が読まないと判断できないので、翻訳者の代表が全体を読み進めます。このときに、5.でできあがったファイルを見て、おかしな箇所は修正するという作業を行い、全体の統一性や内容の確認を行います。


7.出版社による校正

6.までで出来上がったファイルを出版社の方に校正してもらいます。


8.校正の修正

7.で校正された原稿が戻ってきますので、修正箇所を訂正して原稿を完成させます。


9.完成

再度出版社の方に提出し、完成となります。




基本的に、どれも大変なのですが、中でも翻訳の担当として特に大変なのが、2.担当箇所の翻訳、
3.クロスチェック、4.訳語の統一ですね。
担当箇所の翻訳が一番メインで面白いのは言うまでもありませんが、いい日本語訳を生み出す作業は
やはり産みの苦しみが伴います。また、3のクロスチェックでは、他人の翻訳文を読んでいておかしな文章が続くと全体がおかしく見えてきてしまい、どこまで修正の手を加えるかに悩んでしまったりします。気を使わなければならない部分でもあります。4の訳語の統一もどの訳語を採用するかについては、やはり代表者の鶴の一声があるといいですね。早く決まります。


以上が複数人で翻訳した場合の流れでしたが、これを1人でする場合は、3〜5あたりは省略できるかと思います。翻訳の担当が複数いると全体を取りまとめる人が必要になりますので、その方の負担は少し増えるかもしれません。

いずれにしても、原稿が完成し、書籍のカバーイメージができあがってくると、いよいよ出版だ!という実感がわいてきてとてもうれしかったですね。書籍という形になるのはとても充実感があります。
そして、出版日が来ると、アマゾンを検索したり、書店に行ってみたりして自分が訳した本を見つけると、とてもうれしくなったものです。


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