英語の翻訳の経験を通して学んだこと(3)-翻訳テクニック その2

前回のコラムでは、英語から日本語へ翻訳を行うときのテクニックについて2つご紹介しました。
今回は残りの3つをご紹介してみたいと思います。


テクニック3.カタカナ語をうまく扱う

日本語でも良く使われているからといって、カタカナ語をそのまま使ってしまうと、文章がぎこちないものになってしまうことがあるかと思います。
そのような言葉としては、たとえば、review(レビュー)やarchive(アーカイブ)など、他にもたくさんあります。reviewにはいろいろな意味があるのですが、一度検査されたものを複数の人数で「再度精査する」というような使い方がされる場合があります。このようなときに、単に「複数人でレビューする」と訳してしまうと、ピンと来ないと思います。この場合は、「複数人で再度吟味する」などと日本語の訳をきちんとあててあげる必要があります。

また、逆にカタカナ語をきっちり訳しすぎないというのも考えないといけません。
難しいのがidentityという単語です。辞書を見ると「自己同一性」と書かれていますが、こちらは逆に日本語が難しいです。このような場合は、むしろ「アイデンティティ」と素直にカタカナで書いたほうが理解しやすいでしょう。

カタカナ語として日本語でも使われる場合は、どのように対応するかをうまく検討する必要があります。





テクニック4.品詞に惑わされない

自然な日本語で翻訳するためには、品詞にとらわれないことも大事であると思います。
たとえば、よく使われる例として、

I’m not a good English speaker.
(私は英語を上手に話せない。)

というのがあります。これをそのまま「私は良い英語の話し手ではない。」と訳してしまう人はいないと思いますが、このパターンは形を変えてよく登場します。その結果、どこかぎこちない翻訳になってしまうことがあるとおもいます。

上の場合には、名詞→動詞(話し手→話す)というように品詞を変換していますが、これは機械的に対応付けることができるというわけではなく、あくまで自然な日本語になるように自分で組み立て直す必要があります。

なんとなくぎこちない文章だなとおもったら、品詞をうまく変換して、自然な日本語になるかどうかを検討してみる余地があると思います。





テクニック5.他の人に確認してもらう

自分で翻訳していると、全体の内容もわかっているし、話の筋もわかっているために、客観性を失った翻訳文になってしまっていることがあります。つまり、自分では読んでわかる文章でも、他人が見たらわからない文章を書いてしまう場合があります。

こうならないように常に客観的に翻訳を続ける必要があります。「今翻訳している文章を読んで、読者の人は理解してもらえるだろうか?」ということを自問しながら、わかりやすい日本語を組み立てていくという作業をしていかなければなりません。これはなかなか難しいです。集中力も必要です。

他の人が読んでわからない文章になってしまわないためにも、翻訳された文章を他人に読んでもらって理解できるかどうかを確認してもらうと良いと思います。確認してもらう人は、翻訳にかかわっていない人が客観性が保ててよいと思います。

私の場合は専門書を訳しましたが、妻が同業分野に携わっていることもあり、妻に読んでもらって判定してもらっていました。そのときに、たくさんのダメ出しをもらいましたが、そのことによってわかりやすい文章にすることができたのではないかと思っています。


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