英語の翻訳の経験を通して学んだこと(2)-翻訳テクニック その1

前回のコラムでは、英語から日本語へ翻訳を行うときは大学受験のように直訳するのではなく、1文1文をわかりやすく自然な日本語に直すことが大事だと書きました。
これはなかなか難しい作業です。しかし、翻訳作業を続けていると、いくつかのテクニックが存在しているかもしれないことに気が付きました。今のところは自分の中でまとめているのは5つほどありますので、今回はそのことについてご紹介してみたいと思います。



テクニック1. 無生物主語を訳す。

英文では人間以外のものが主語に来ることが頻繁にあります。
たとえば以下の文を直訳してみましょう。

This result revealed that increase in NaOH concentration showed a negative effect on protein recovery.

直訳:『この結果は、水酸化ナトリウムの濃度が増加がタンパク質の回収に否定的な効果を示すことを明らかにした。』
となります。おそらくこのままでは自然な日本語とはいえませんよね。

もっと滑らかに読めるようにすると、

『この結果から、水酸化ナトリウムの濃度が増加するとタンパク質の回収にマイナスに作用することが明らかとなった。』

という感じがよいのではと思います。
この場合のコツとしては、無生物主語を「〜が・・・した」という主語にもってくるのではなく、「〜によって(〜のために)・・・となった」いう具合に置き換えてあげるとよいと思います。


用法としては他にも3つほどパターンがあります。

パターン1.原因・理由を表す場合

An acute headache prevented me from going out.

直訳すると、「強烈な頭痛が私を外出することから妨げた」となりますが、これを自然な日本語になるようにすると、

強烈な頭痛のため、私は外出できなかった。

となります。


パターン2.条件・手段・方法を表す場合

That bus will take you to Tokyo in 30 minutes.

直訳:あのバスは、あなたを東京に30分で連れて行く。

→ あのバスに乗れば30分で東京に着きますよ。


This machine enables you to see the micro-world.

直訳:この機械はあなたがミクロの世界を見ることを可能にする。

→ この機械があれば、ミクロの世界を見ることができますよ。


パターン3.時間を表す場合

Two more years will make you forget about her.

直訳:さらに2年が彼女のことを忘れさせてくれる。

→ 後2年もすれば彼女のことを忘れるよ。



テクニック2. 1文が長いと2文以上に分ける

翻訳をしていると、ピリオドからピリオドまでがとても長い文章に出会うことがとても多くあります。英文では1文であるからといって、正直に1文にしてしまうととても読みにくくなってしまうことがありますので、その場合は思い切って読みやすいように2文以上に分割してしまうのも手です。
たとえば、以下のような文章を見てみましょう。


His abrupt resignation in June 2010 would not force a change in government, because the Democrats still hold a majority in Parliament's Lower House.

この文章はあまり長くはありませんが、これをbecauseの前後で以下のように2文にわけることができます。

2010年6月に突然起こった彼の辞任は、政府に変化を引き起こすものではない。なぜなら、民主党は参議院でなおも多数を占めているからである。

このような形で、1つの文を2つ以上に分割することによって、すっきりと読みやすくすることが可能になると思います。訳す側にとっても訳しやすくなるというメリットもあるのではないでしょうか。上記では、becauseで切ってみましたが、文章の意味の区切りがつくところで分けると良いと思います。ときどき、4行にも5行にも渡って1つの文が続くことがありますが、そのような場合にはこのテクニックを検討してみてください。


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